橋本宗洋「格闘裏グルメ」11/30更新
青木vs北岡、決定。その非情なるドラマ性
「まさかやらないだろう」と思われていた試合が実現することになった時ほど、インパクトは大きい。そういう意味で、『元気ですか!! 大晦日!!』で行なわれる青木真也vs北岡悟のDREAMライト級チャンピオンシップは、究極のインパクトを持つマッチメイクと言っていいかもしれない。少なくとも日本の格闘技ファン、PRIDE以降の日本MMAを見てきた人間にとってはそうだ。
言うまでもなく、青木と北岡は固い絆で結ばれてきた。単なる友情とは違う、特別で複雑な結びつきだ。格闘家として、青木のことを理解できるのは北岡だけであり、北岡のことを理解できるのは青木だけ。
北岡がDREAMに初参戦することになったとき、北岡に青木との対戦に関する質問が飛んだ。あくまで、北岡に対する質問である。だが、青木はそこに割って入った。
「いま、この場でそういう質問をされるのは不快ですね」
二人にとってもファンにとっても、この対戦は特別なもの。だから、そう簡単には実現しないはずだった。だがDREAMは、オファーを出したのである。より正確に言うと、青木への対戦相手候補リストに北岡の名を入れた。そして青木は、複数の選手の中から、北岡を選んだ。
青木が北岡を選んだ第一の理由は、候補の中で一番強い選手だから、だろう。それは北岡もわかっている。だが相手候補の中には廣田瑞人の名前もあった。青木は廣田との再戦よりも北岡を選んだことになる。もちろん、青木は2年前に廣田に完勝しているから、再戦を受ける理由はない。だがそれは「廣田と再戦することよりも、北岡と闘うほうがいいと思った」ということでもあるのだ。
特別な試合、漠然とした“いつか”やるはずの試合が“いま”きた。夏には可能性を聞かれるだけで不快だった試合を、青木は自ら選んだ。
“選ばれた”北岡は、その複雑な思いを振り切るようなコメントを残した。表情は、まるで試合直前のようだった。
「最初は、盛り上がる舞台という以上に自分の格闘技人生にとって実りのあるものがほしいと思っていました。でも、それは傲慢な考え、いまの状況を考えたら勘違いだと気付きました。結局、主催者や相手に委ねていたのが甘さだったんです。(オファーは)いつきてもおかしくなかった。自分は青木真也の手の平の上にいたんだな、と。相手よりも自分のいたらなさに怒りを感じます。弱い、甘い自分と決別するために、この試合をやらなきゃいけない。僕たちの関係性はいっさい関係ないです。ただの試合です。相手がとてつもなく強いというだけで。格闘技は強い人と強い人が闘うから面白い」
「すべての状況に対して“こんなものかな”と。それはあきらめというより気づきです。もちろん、相当な覚悟はしてます。ただじゃリングを降りられないし、ただじゃリングを降ろさない。そういう試合です」
「ファンも関係者も相手選手と自分の関係性を知ってると思いますが、それとは関係ないものがリングで繰り広げられるでしょう。逆コーナーにいるヤツは、親でも兄弟でも殴るし蹴るし、腕も足ももぐ気でいく。それが僕の格闘技です」
囲み取材では、試合をすることでこれまでの関係が崩れることも厭わないと語った北岡。「親でも兄弟でも」とあえて言ったところに青木をどう思ってきたかがわかるが、それをすべて捨てるという決意がみなぎっていた。
北岡は、青木との関係性を「試合では関係ない」と言ったが、見る者としては当然、関係ないわけがない。関係性を捨て去るところまで含めて、強烈なドラマなのだ。
そして、そういうドラマ性こそ、日本格闘技に最後に残された武器なんだと思う。
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- コラム:橋本宗洋
- 2011.11.30 Wednesday




















