11月20日更新
ブロック・レスナーの快挙達成で20年越しのアメプロ最強伝説が証明された!?

「プロレスラーは本当は強いんです!」とは11年前に発した桜庭和志の名言なのだが、「やっぱり俺の予想通り、アメリカンプロレスは最強なんです!」と今度は私が声を大に……、いや中ぐらいにして言っておこう。そう、あのブロック・レスナーが総合転向4戦目(UFCでは3戦目)にして、“金網の鉄人”ランディ・クートゥアーをTKOで破り、UFC世界ヘビー級王者になってしまったのだ。
そこで、なぜ「俺の予想通り」となるのかと言えば、遡ること20年ほど前、当時まだ『週刊ファイト』の記者だった私は、『ゴング格闘技』の「100人大アンケート 最強格闘技は何か!」という企画に参加している。回答各氏は、マスコミ関係者から現役格闘家(プロレスラー、力士、ボクサー、キックボクサー、レスリング金メダリスト、空手家など)まで、多岐に及んでいた。もちろん、UFCもPRIDEも世に生まれる以前の話であって、「総合格闘技」なる名称だけが辛うじて独り歩きしていた時代。
おもしろいのが、鬼の黒崎健時氏が「レスリング」と答えていたり、現役の関取だった維新力が「プロレス」で、シュートボクシング創設者のシーザー武志会長が「相撲」と答えていること。最終的にアンケートの集計結果は、上位からムエタイ(22名)、プロレス(21名)、相撲(16名)、柔道(11名)、レスリング(9名)、ボクシング(8名)、空手(6名)……と続いていた。そこで、私だけが「アメリカンプロレス」と回答している。無論、集計ではプロレスのカテゴリーに入っているのだろうけれど、プロレスではなく「アメプロ」にこだわりを持っていたのだ。改めて誌面を確認してみると、その理由として、「レスリング、アメフトの経験者が多く、圧倒的な体格と身体能力を持っている者が多いから」と答えている。
だから、そういうことなのだ。苦節20年(笑)、当時の私の思いをレスナーが現実化してくれたわけだ。しかし、率直にいうなら、アメプロが強いのではなく、ブロック・レスナーが強いということ。また、一つの時代の節目として、あの瞬間、鉄人クートゥアーとの相性(?)がバッチリ合ったともいえるだろう。ただ、何度も映像を観て感じたのは、さすがに元NCAA(全米学生レスリング)王者であり、WWEデビューから2年でプロレスの頂点を極め、あの体格でシューティング・スタープレスを使いこなす身体能力を持つ男だということ。筋肉質の巨体ながら俊敏だし、腰が重いし、パンチも向上しているし、何より体重移動が抜群に上手いのだ。また、過去にレスナーがわずか2年でWWEを退団し、自身の夢でもあったNFLに挑戦した経緯も、いま思えば、NBAの神様マイケル・ジョーダンが29歳という全盛期に「もはや証明するものは何もない」というセリフを残して引退し(※2年後に復帰)、野球のメジャーリーグ(MLB)に挑戦したアクションを彷彿させるのだ。
正直いって、NFLのミネソタ・バイキングスを解雇され、新日本プロレスに参戦した頃のレスナーという男には、あまり乗れなかった。IWGPベルト持ち逃げ云々の次元ではなく、プロレスラーとしての姿勢に疑問を感じたのだ。おそらく、当時の彼はプロレスに復帰しながらもプロレスを見くびっていたか、プロレスラーである自分自身に乗り切れなかったのだと思う。それは、05年12月の中西学、永田裕志とのシングル2連戦を見れば明らかだった。中西の痛いチョップを食らうと背中を向けてしまったし、永田のミドルキックを胸板にバシバシ食らうと、「スティッフ!」(※いてーじゃねえか、カタイんだよ、オメーは!という感じの意味でしょうね)と叫んでいた。WWEと新日本のスタイルが違うとは言え、これではプロ失格だろう。だから、こんな痛みに弱い男が、痛い総合格闘技の世界で通用するわけがない、痛みに耐える根性はない、と私は思っていたのだ。
ただ、レスナーと3WAYマッチ(レスナー vs 蝶野 vs 藤田)で闘い、IWGP王座を奪われた藤田和之のレスナー評だけは当時から違っていた。「アレは化物でしょう。体重が増えすぎたからオリンピックを諦めただけであって、もの凄い身体能力もってますよ。ただ、性格的にプロレスに向いていないんじゃないかなって。そのへんがカート・アングルとの違いじゃないですか? まあ、そんなに話した事もないから分からないんですけど」。それって、まさに藤田自身のことを言っていたような気もする。藤田も難なくフランケンシュタイナーをこなしてしまうような身体能力を有する男であるからだ。
いずれにしろ、プロレスの世界で頂点を極め、総合でも頂点に立った男は史上初。ブロック・レスナーは、とんでもない快挙を達成したことになる。あらゆる意味で冬の時代に……「やっぱりプロレスラーは強いんです」と少しばかり胸を張ってみたい。
撮影/Josh Hedges(UFC)