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金沢“GK”克彦のこちらプロレス村役場ドットコム

1961年12月13日、北海道帯広市出身。青山学院大学卒業後、新大阪新聞社に入社。“I編集長”こと井上義啓氏のもとで『週刊ファイト』編集部でキャリアをスタート。その後、日本スポーツ出版社『週刊ゴング』編集部へ。99年から04年まで編集長を務める。05年に同社を退社。以後はフリーランスとして幅広く活躍中。テレビ朝日系『ワールドプロレスリング』やサムライTV等で解説を務めるほか、『kamipro』でも執筆。著書に『風になれ』(東邦出版)、『力説』(エンターブレイン)。通称GK(=ゴング金沢)。

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10月30日更新

伝説でも歴史の証人でもなく必然だった!『プロレス・エキスポ』両国3連戦をゲップが出るほど大満喫


広い国技館はガラガラだった。もう、気持ちいいほどにスッカスカだった


10月24&25日、両国国技館3連戦という画期的にして無謀な企画にチャレンジした『プロレス・エキスポ2008』(以下、エキスポ)をすべて見届けた。テレビ解説のオファーを受けていたから、否がおうにも全試合をリングサイド最前列の放送席で観ることになったわけだ。こういった初物というか、何がどうなるか分からない興行となると、なぜか私のもとへオファーが来ることが多い。

橋本真也率いるZERO-ONE旗揚げ戦に始まり、『WRESTLE-1』が東京ドームに初進出した大会(※メインカードはなんとボブ・サップ vs アーネスト・ホーストのプロレスマッチ!)や、K-1 JAPANで実現した猪木軍 vs K-1軍3対3対抗戦(※メインは藤田 vs ミルコの初遭遇)やら、新日本の実験的ニューブランド『WRESTLE LAND』やら、最近ではお笑い芸人軍団によるプロレス興行「まねんのか!」やら……もう楽しいったらありゃしない(笑)。みんなが二の足を踏んだり、頭を抱えてしまう興行のテレビ解説を務めるのはじつに刺激的であって、それがNGの許されない生放送であればなおさら気合が入るというものだ。

すでに先週の話なので、大会の細かい状況を書いても仕方がないだろう。とにかく、広い国技館はガラガラだった。もう、気持ちいいほどにスッカスカだった。それなりに格好のついたのは25日の第3部(蒼の章)だけ。しかし、これも必然の結果だろう。だいたいパブリシティが行き届いていないし、主催のフリーバーズインターナショナル・ジャパン(以下、FBI)が掲げたテーマ「世界平和」がいまいちピンとこない。エキスポ(万博)=世界平和となるわけだが、ファンがプロレスに平和を求めているとは思えないし、時代に逆行するテーマであることも明白。こうなると、一見さんであったり、よほどのマニア(旗揚げマニア)しか足を運ばないだろう、という見方が成り立つわけだ。だから、初日に会場入りした時のスカスカぶりを見ても特に驚くことはなかった。「俺は俺の仕事を全力でやり遂げるのみ」という思いだけだった。

ところが、興行自体はおもしろかった。大会のメインテーマ曲は「フリーバード」(レナード・スキナード)であり、まずこれにグッときた。FBIの名称を象徴するのだろうが、あのファビュラス・フリーバーズ(故テリー・ゴディ&マイケル・ヘイズ)のテーマであり、これぞ米マットに入場テーマが採用された草分け的な名曲なのである。さらにスーパーバイザー蝶野正洋が登場する際には「ファンタスティック・シティ」(蝶野の初代テーマ曲)が流れる。

たとえ甘いと言われようと、今回のエキスポに関しては興行論を振りかざすのはやめておこう


そして、特別立会人のダニー・ホッジ氏の存在。ホッジ氏は蝶野相手に軽快なシャドー・ボクシングを披露したり、連日に亘って伝説のリンゴ潰しのパフォーマンスを公開した。ホッジ氏といえば、メルボリン五輪のレスリング銀メダリストであり、アマチャアボクシングでは全米ゴールデングローブ王者に輝き、68年にはウィルバー・スナイダーとの名コンビでBI砲(馬場&猪木)を破りインタータッグ王者となっている。子供心にこのシーンをテレビで観た私は愕然としたものだ。テーズも恐れる無類のシューターでもあった。当年76歳だが、もし時代が40数年早かったら、MMA最強の男になっていたのではないか? そんな幻想を抱かせてくれるに充分な存在感があったし、過去に来日したどんなレジェンドたちを観たときよりも、私は感動の嵐に包まれてしまった。こういった演出や興行の進行自体にはまったくグダグダ感がなかったし、試合で厳しかったのは余りにも長すぎた第2部(白の章)のセミファイナル(モーターシティ・マシンガンズ vs C・アサシン&A・マーリー)ぐらいである。

第3部のセミ(日高郁人 vs クリストファー・ダニエルズ)とメイン(田中将斗&関本大介 vs モーターシティ・マシンガンズ)の2試合は出色の内容であり、とくにセミの一戦は私的観点でいくと今年のジュニア戦線でベストバウトではないのか? あのダニエルズが試合後、感極まって涙を流し、思わず日高ももらい泣き。ダニエルズとしては試合の中で完璧なパフォーマンスを見せられたことに、かつてない充実感を味わったのだと思う。

正直いって、Xデヴィジョンの象徴であるシェリー&セイビンと不慣れな日本人レスラーが噛み合うのは至難の業である。それをヘビー級の田中&関本がこなしてしまったのも素晴らしかった。そして、エンディングでは出場全選手が揃ってノーサイドの交換会。そこで流れた曲は世界共通の「イッツ・ア・スモールワールド」だった。この光景を観たとき、「もう2大会ぐらい喋れるぞ」と思った。名残り惜しささえ感じたのだ。3大会をすべて通しで観た私の素の感情だった。

イベント終了後、蝶野に「なんか名残り惜しいよね」と話し掛けると、「うん、俺もそう思った。お客は薄かったかもしれないけど、俺らリング上のレスラーってリングに集中してるから、最後の充実感っていままで味わったことのない感覚だったよね」としみじみ。そう、たとえ甘いと言われようと、今回のエキスポに関しては興行論を振りかざすのはやめておこう。FBIの面々は皆さん素人のプロレスファン代表なのである。ファンの夢に乗っからせてもらった私は、いまとても幸せで平和な気分だ。