金沢“GK”克彦のこちらプロレス村役場ドットコム
1961年12月13日、北海道帯広市出身。青山学院大学卒業後、新大阪新聞社に入社。“I編集長”こと井上義啓氏のもとで『週刊ファイト』編集部でキャリアをスタート。その後、日本スポーツ出版社『週刊ゴング』編集部へ。99年から04年まで編集長を務める。05年に同社を退社。以後はフリーランスとして幅広く活躍中。テレビ朝日系『ワールドプロレスリング』やサムライTV等で解説を務めるほか、『kamipro』でも執筆。著書に『風になれ』(東邦出版)、『力説』(エンターブレイン)。通称GK(=ゴング金沢)。
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4月28日更新
「お互いのプライドがルールだ」と破壊王は言った!
試合中の怪我や事故に関してあらためて考えてみよう
イスを斜めから頭部に打ちつけるという行為はタブーだろう
今週などは私の守備範囲であるメジャー系団体が、ほとんど地方巡業に出てしまっているのでネタがない。もちろん、話題はあるのだろうが、ライブで観ていないものをとやかく言っても仕方がないし、我が家のテレビは地上波放送しか映らないわけで、あの厭味な「アナログ」の4文字が画面右上に出るテレビをいまも観賞しているような状況なのである。
従って、プロレス&格闘技に関する情報源はインターネットと『東京スポーツ』に限られてくる。専門誌は買わないし、ごくたまに立ち読みする程度。それも、選手のコメントを正確に知りたい時だけ立ち読みして、その部分は暗記してしまう。一方で、『東スポ』は、エメリヤ―エンコ・ヒョ―ドルがディファ有明に登場するだけで、あたかも三沢との対戦が実現すかのように、キング vs 皇帝と煽っている。バカも休み休み言いなさいという感じなのだが、ついつい見出しに惹かれ記事を最後まで読んでしまう自分も未だにいるわけだ。
そこで、ここ最近気になった出来事を取り上げてみたい。新日本の4.5両国大会での話。一番のサプライズは矢野通の造反&中邑真輔との結宅だろう。試合中に真壁刀義の加勢に出てきたと思いきや、翻って真壁の頭部をイスで横殴。この一撃で頭部に裂傷を負った真壁はダウン。担架で医務室に運ばれている。
結局、この造反劇は真壁の負傷リタイア、シリーズ前半戦欠場という流れを生んでリアリティを増したのだが、やはりあの一撃は矢野らしくない。イスを斜めから頭部に打ちつけるという行為はタブーだろう。過去に、この手のアクシデントでは、全日本マットにジャパンプロの一員として参戦していた“イス大王”栗栖正伸が、渕正信の頭にイスを叩き込んだ時にイスの角が頭部をエグッてしまったことがある。そのまま渕は当時の「ゴング編集部」と同じ町内にあった文京区白山の救急外科病院に運ばれている。
近いところでは、一昨年の『火祭り』リーグ戦において、場外戦で大谷晋二郎が因縁の村上和成にイス攻撃を見舞った際に打ち所が悪く、村上の傷は頭蓋骨にまで達した。その結果、脳にまで影響が出る重症でドクターストップ。未だに村上は戦線復帰を果たせない状況だ。藤原喜明が胃癌と闘いながらも、元気にリングに上がっている姿を見るにつけ、いかに頭部、脳へのダメージというものが深刻であるか、如実に示す出来事である。
中国地方を巡業していた新日本と全日本が、偶然にも高松市内の同じホテルに宿泊した
これは余談ではあるが、先だっての4月23日、同じく中国地方をサーキットしていた新日本と全日本が、偶然にも高松市内の同じホテルに宿泊したという。ホテルに向かう途中のドライブインでも移動バスが一緒になって、時ならぬ同窓会と相なった。いまの両団体にはわだかりも何もないし、むしろ友好関係にある。それでも、気になるところは気になる。たとえば、相も変わらず相手の悪口を言い合っている永田裕志と鈴木みのるに接点はあったのかどうか? もう完全な興味本位で永田にメールを送ってみた。「全日本とバッティングしたらしいけど、鈴木みのるとは会ったの?」。そうすると、すぐさま返信がきた。「いやいや、それが早速ドライブインで会っちゃってねえ。柄にもなく、俺の頭の状態を心配してくれてましたよ(笑)」。
このタイミングで会っってしまうのだから、やはり2人は運命の糸で結ばれているのか? しかし、怪我や病気を心配するところはいかにも鈴木らしい。もしかしたら、いまこの業界でもっとも責任感というものを持っていたり、業界全体の底上げを考えている人間が鈴木なのかもしれない。要は、プロレスに対してマジメなのだ。無論、永田とは永遠の腐れ縁であるから、どこかで常に相手のことが頭の片隅にあるのだろう。
話が随分と横道にそれてしまったが、矢野の裏切りは真壁の欠場により、余計に迫真さを増した。まさに、これこそ怪我の功名となるのだが、やはり相手に怪我をさせたのは試合巧者たる矢野らしくない。率直に言って、本来、プロレスラー矢野通の持つ力量というのは中邑、後藤を上回っていると私は思っているからだ。3.8名古屋大会(NJカップ1回戦)での中西vs吉江の一戦も、人間離れした耐久力を持つ中西でなければ、病院送りどころか、再起不能の事故さえ頭をよぎる危険な攻防が見られた。そんな事故(?)が続く中、いま思い出すのは、何度か聞いた橋本真也の名セリフである。「プロレスっていうのは、お互いのプライドがルールなんだよ!」。
そういえば、若手時代はクラッシャーと呼ばれていた橋本だったが、トップに立ってからは相手に怪我を負わせたことがない。破壊王と呼ばれながらも、しっかりとプライドの中でギリギリのルールを厳守していたのだ。いま、そういった破壊王タイプのレスラーにお目に掛かれないのが少しばかり残念である。