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金沢“GK”克彦のこちらプロレス村役場ドットコム

1961年12月13日、北海道帯広市出身。青山学院大学卒業後、新大阪新聞社に入社。“I編集長”こと井上義啓氏のもとで『週刊ファイト』編集部でキャリアをスタート。その後、日本スポーツ出版社『週刊ゴング』編集部へ。99年から04年まで編集長を務める。05年に同社を退社。以後はフリーランスとして幅広く活躍中。テレビ朝日系『ワールドプロレスリング』やサムライTV等で解説を務めるほか、『kamipro』でも執筆。著書に『風になれ』(東邦出版)、『力説』(エンターブレイン)。通称GK(=ゴング金沢)。

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5月12日更新

象でも熊でも挑戦してきなさい!
中西学とは幻想、妄想を抱かせる新王者



中西というレスラーは、幻想と妄想を抱かせてくれる数少ない貴重な人材なのだ


前回の当コラムで中西学のIWGP挑戦(5.6後楽園ホール)を煽りまくってみたところ、本当に後楽園ホールは「中西ランド」か「マナブ・ボンバイエ」か、という状態と化してしまった。中西がジャーマンスープレックスで棚橋から3カウントを奪った瞬間、ホールの観客は総立ち。お隣の東京ドームで「EXILE」がライブを行なったとき以来の揺れを感じた。

かく言う私も、北側の最後列で「サムライTV」キャスターの三田さんと観戦していたのだが、その瞬間は立ち上がって万歳をしていた。その後、ノアの日本武道館大会を観戦して、夜はサムライTVのSアリーナで長州小力と共演したりと、結構忙しかったのだが、中西戴冠のあとは魂が抜けてしまったような1日だった。なにか、祭りが終わったあとという感覚なのだ。そう、中西のIWGP戴冠は季節外れに突然やってきたお祭りだったのだと思う。

だいたい、入場の際に中西の後ろに同期の永田裕志がピッタリ寄り添っている光景を観ただけで、ファンは「ウォー!」と沸くのである。これが歴史というものであって、タイミングというものなのだろう。現在のパートナーである大森隆男が付いても観客はこうはいかない。ここは大森ではなく、永田なのだ。そこで私には、また余計な想像力(妄想?)が働く。ここで、ちょっと遅れてケンドー・カシンが入って来たらどうなるのか? もう、客席はその時点で大爆発だろう。だが、カシンは中西の横を素通りして、棚橋弘志のセコンドに付いてしまう。もう、客席は爆笑の渦だろう。ゴングが鳴る前から、そんな妄想で頭がいっぱいになる。ここで、ハタと気が付いた。中西というレスラーは、幻想と妄想を抱かせてくれる数少ない貴重な人材(野人材?)なのだ。

それは、不思議なことに敗れた棚橋の様子を見ても伝わってきた。棚橋は中西の1発目のジャーマン(大中西ジャーマン)を食った際に、左の肋骨を骨折した。大会終了後、負傷個所にサラシをグルグル巻きにしてもらいながらも、なぜか棚橋は爽やかな表情を見せていた。

普段プロレスの話題など滅多に出ないK―1スタッフの間でも、中西ネタは大いに盛り上がったという


「試合は負けるし、肋骨も折れちゃいました。でも、お客さんがあんなに喜んでくれたから、そこはよしと。でも、中西さん、やっぱりここぞというときに『ホ―ッ!』をやらないと。僕だって『ホ―ッ!』を観たかった」

ベルトを失った王者をして、こうなのである。新王者となった中西の初防衛戦(6.20大阪)の相手は、リターンマッチで棚橋に決定してしまった。正直、一番厳しい相手だろう。というのも、5.6の試合を冷静に振り返ってみたとき、やはり試合を巧みにリードしていたのは、棚橋の方だった。タナの試合を作る力量というのは、もしかしたら現プロレス界ナンバー1と言っていいのかもしれない。だから、中西にとって棚橋を2連破というのは相当難しい作業となってくる。まあ、決まってしまったものは仕方がない。しかし、棚橋を突破した暁には、中西への挑戦者にはとんでもない相手を用意してもらいたい。

たとえば、私とは旧知の仲のKー1関係者は、私以上に中西好きな人物なのだが、中西がIWGP王者になった翌日、普段プロレスの話題など滅多に出ないK―1スタッフの間でも、中西ネタは大いに盛り上がったという。いわく、挑戦者は「桜庭さんがいい」とか「やっぱりミノワマンとやるべきだ」とか「ここは曙でしょう?」とか「カシンしかいないね」という感じ。ミノワマンなんて最高だろう。実現すれば、野人 vs 超人である。ミノワマンが本当に超人を目指すなら、絶対に野人を避けては通れまい(どういう理屈だよ!)。これも、幻想だ。私も同じで、中西なら、相手はビッグショーとか、ブロック・レスナ―とか、象とか熊とかゴリラとか、まず実現不可能な相手が次々と浮かんでくる。

実現可能な相手なら、カート・アングルもいる。「プロレスとはサイコロジーの世界である」と言い切るカートは、世界最高峰に位置するレスラー。中西だったら、そのカートの頭脳とコンピューターをショートさせてしまうのではないか? そんな怖いもの見たさである。そうそう、同じく野人系ならノアの杉浦貴もいいし、クラッシャーの森嶋猛もいいだろう。勝手に挑戦者を選考していくだけでワクワクしてくる。あっ、野獣の藤田和之はどうだろう? そう思って、藤田に「中西、IWGP奪取!」の速報メールを送ったみたところ、「そうですか。それはおめでとうございます、とお伝えください」というじつに素っ気ない返信があった。おーい、野人ががんばったぞ。そろそろ、野獣も仕事をしたまえ!