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金沢“GK”克彦のこちらプロレス村役場ドットコム

1961年12月13日、北海道帯広市出身。青山学院大学卒業後、新大阪新聞社に入社。“I編集長”こと井上義啓氏のもとで『週刊ファイト』編集部でキャリアをスタート。その後、日本スポーツ出版社『週刊ゴング』編集部へ。99年から04年まで編集長を務める。05年に同社を退社。以後はフリーランスとして幅広く活躍中。テレビ朝日系『ワールドプロレスリング』やサムライTV等で解説を務めるほか、『kamipro』でも執筆。著書に『風になれ』(東邦出版)、『力説』(エンターブレイン)。通称GK(=ゴング金沢)。

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5月19日更新

プロレスラーはアスリートじゃないんだよ!
高山との三冠戦に向けて、鈴木が爆弾発言?



鈴木も高山も一匹オオカミ的存在だから、集団であれやこれやと全日本マット制圧を訴えても、ピンとこないのだ


日程がことごとくカチ合ってしまったせいで、4月の全日本『チャンピオン・カーニバル』は1戦も見ることなく終わった。鈴木みのるが初優勝した、そして、「これで高山選手の三冠ヘビーに挑戦ですね?」と報道陣に聞かれ鈴木が激怒した。その程度の予備知識しかないが、結局、5.30愛知県体育館で高山善廣Vs鈴木みのるの三冠頂上決戦が決定したようなので、ここは死ぬ気で早起きして、全日本の5.17後楽園ホール開幕戦(正午スタート)に足を運んでみたのだ。

ところで、開幕2日前の15日、鈴木はパンクラス横浜道場で公開練習を行っている。「公開練習とかいうと、どいつもこいつも俺のネタをパクリやがって」とクレームをつける鈴木は、当日なんと北岡悟(初代戦極ライト級王者)と川村亮(第4代ライトヘビー級パンクラス王者)を相手に、汗だくになってスパーリングを披露。その後のコメントでは、「別に総合の練習をして、その技術を使うわけでも、原点を見直すわけでもない。同じ練習場に別の競技の若いチャンピオンが2人いるから、一緒にやっているだけ。公開練習とはいえキツイよ」と前置きしたうえで、「要は(高山戦に)本気だってこと。この試合が終わってGURENTAIが存在するかも分からない。それぐらいの覚悟がある」と締めた。

当日のホールの入りは7割程度と全日本にしては多少寂しい入りだった。だが、若い選手が伸びているリングだけに観客のテンションは高い。セミファイナルに登場した鈴木はMAZADAをパートナーに高山&NOSAWA論外と対峙した。観客のボルテージは試合全体を通していま一つだった。やはり、突然にGURENTAIが真っ向から敵対するという図式についていけない部分があるのだろう。ガシガシとやり合えばやり合うほど、反対に違和感が増していくような感覚。

試合終盤に見せ場が二つ待っていた。エプロンの高山の右足をトップロープ越しに捕えた鈴木が、タランチュラ式のヒールホールド、アキレス腱固めで絞め上げる。この手の攻撃は高山との初一騎打ち(03年9・21相模原大会/NWFヘビー級選手権)の際、タランチュラ式腕十字固めを披露したのが始まりだった。余談だが、たまたまこの大会を、ご近所に住む高阪剛が観戦に来ていて、「さすが鈴木さんですねえ」と感心していたものだ。

二つ目の見せ場はフィニッシュ・シーン。NOSAWAにゴッチ式パイルドライバーを決めて、これでジ・エンドと思いきや、鈴木はフォールにいくことなく、マウントポジションから掌底の連打。これでNOSAWAをノックアウトしている。館内はザワメキに包まれた恰好。全日本らしくないといえば、全日本らしくない結末だった。試合後、ひさしぶりに鈴木のコメントを聞きに行った。私の場合、正直いってGURENTAIがお約束的に4人で盛り上がり気勢をあげるコメントにはあまり興味がない。もともと、鈴木も高山も一匹オオカミ的存在だから、集団であれやこれやと全日本マット制圧を訴えても、ピンとこないのだ。だが、今回は鈴木個人の闘い。やはり、コメントも鈴木らしかった。

「なんで先のことばっかりに話を持っていくのかな? 東スポはそれでいいけど、ほかの媒体はそれじゃダメだろ」


「これは本番に向けての予備戦でもなければ、予行演習でもない。すべてを含めて三冠ヘビー級選手権は始まっている。俺の前に、俺より強いと言われるやつがいる。だからそいつを殴りたい。倒すよ、高山は。三冠というよりも高山だな。悪いが、何をとってもおれのほうが強いし上だろう」

黙って聞いているつもりだったが、ここで鈴木と目が合ってしまったので、質問をぶつけてみた。『サムライTV』のカメラも回っていたし、まあ、サービスでもある。「過去の1勝1敗という戦績は、今回の勝負には関係ないこと?」

「去年勝ったとき(6.17後楽園ホール/鈴木みのる20周年記念興行)には、高山選手は復帰して初のシングル戦だったからと言われるんだよ、勝ったところで。その前にあいつと闘ったときにも、鈴木さんはプロレスに戻って間もないですからねって言われるんだよ。やっといろんな意味で五分に闘える。誰も文句はないだろ? 俺から見たらハナクソみたいなやつらも全部倒してきた。愛知県体育館であいつを倒して、俺がこの業界のトップであることを宣言する。いまのあいつから三冠ベルトを獲れたら誰も異論はないだろう」

ひさびさに聞く“みのる節”は、やはり心地よい。このセリフには二つの要素が含まれている。来たる三冠ヘビー戦の期待感を煽る営業活動と、確固たる覚悟だ。その敷居とハードルは高い。鈴木と高山の関係の中で、自然とハードルは高くなっていく。前回の6.17一騎打ちの後、両者とも試合後はへロへロだった。鈴木は、高山にパンチを食らった頬のあたりを押えていたし、高山は「ある意味、総合(格闘技)に出るときより覚悟を強いられるね」と苦笑した。この2人が対戦する以上、名勝負ではなく、「凄い!」「怖い!」というプロレスを万天下に示さなければならないだろう。

翌18日、「今日は暇だから。どうせ金沢さんも暇なんだろう」と最初から悪態をつきながら(?)鈴木が電話をしてきた。まあ、業界に関する世間話である。その中で、『チャンピオン・カーニバル』終了後に、マスコミの前でブチ切れた理由をこう語っていた。「最終戦の試合前に、『あと二つ勝てば高山戦ですね?』と言われたら、そりゃ腹立つだろ? カーニバルってそんな安っぽいものかって。なんで先のことばっかりに話を持っていくのかな? 東スポはそれでいいけど、ほかの媒体はそれじゃダメだろ」と言う。確かに、新日本の選手なども「先のことじゃなくて、今を書いてほしい」とよく口にしている。その後、鈴木の口からトドメの一言が出た。

「プロレスラーはアスリートじゃないんだよ!」

これはインパクトがあった。悪い意味ではない。例えば、決勝に向けて予選を勝ち抜いていくのがアスリートであるなら、プロレスラーは毎日が毎試合が決勝である。その1試合をどれだけ記憶に焼き付けるか、それがプロレスラーの仕事なのかもしれない。それにしても、こういったセリフを吐けるのは武藤敬司か鈴木ぐらいのもの。他の十把一からげの選手が口にすれば「フン」と鼻で笑われてしまうだろう。

かつて武藤敬司は言った。「思い出と闘ったって勝てっこねえんだよ!」。もしかしたら、これこそパラドックスなのかもしれない。そう、プロレスラーとは永遠に過去の思い出を超えるために闘う商売なのかもしれない。