6月30日更新
8.2野獣復活へ向け藤田がロスへ!
その先に石井慧との大一番は?

昨日の午前11時33分にメールを受信したのだが「お疲れ様です。それでは。」だけである
去る6月9日、8.2『戦極〜第九陣〜』(さいたまスーパーアリーナ)で、1年2カ月ぶりに実戦のリングに登場する藤田和之の出場会見が開かれた。ところが、その4日後の13日、ノアの広島大会の試合中、三沢光晴さんが死去するという事件が勃発。その1週間後には新日本が6.20大阪大会でビッグマッチを開催しており、藤田の件に触れる機会がまったくなかった。
そこで、今週こそ藤田の意気込みを、当コラムの読者に伝えようと思っていた矢先、藤田は消えてしまった。正確には、昨日(29日)午後、成田空港を経ちロサンゼルスへ向かってしまったのである。いつも藤田は突然いなくなる。そして、突然に舞い戻る。だから、私はいつも藤田には口を酸っぱくしてこう言っている。
「いい? 成田から出発直前に『では、行ってきます』のメールはなしだぜ! せめて前日に『明日、ロスに行きます』ぐらいにしてよね!」
その度に、藤田は「大丈夫ですよ、ちゃんと連絡入れますから」と答えるのだが、この2〜3年、その約束は守られた試しがない。今回も酷い。昨日の午前11時33分にメールを受信したのだが、「お疲れ様です。それでは。」だけである。「それでは」って、それだけかい!? 私も寝床から必死の思いで、「行きますかぁー? 試合に向けて一言!」と返信すると、「それでは、また。」とだけ再返信。ホントに、それだけかい? という感じだ。
もうひと眠りして、午後2時過ぎに電話を入れてみると、「こちらはNTTドコモです。おかけになった電話番号は電波の届かないところか……」と例のガイダンスが流れる。あ〜あ、行っちゃったあ。本当に行っちゃったのだ。まあ、仕方がない。例え、前日に電話でキャッチしていたところで、おそらく藤田は試合のことなど何も話はしないだろう。どうせ世間話や昔話をして大笑いして、それで終わりに決まっている。
では、ここ1年の藤田は何をやっていたのか? 昨年の6.8『戦極〜第三陣〜』(さいたまスーパーアリーナ)でトラビス・ビューと対戦した藤田は、出会い頭の左ジャブをカウンターで食らってダウン。わずか84秒でTKO負けを喫した。藤田が相手の打撃で落ちてしまったのは、彼の格闘技人生で初めて見るシーン。過去、ヒョ―ドルと殴り合っても、シウバのパンチ、キックを雨あられと食らっても一度も落ちたことのない藤田だけに、なおさら衝撃的だった。
当時、私はこの一戦に関して何も突っ込みを入れなかった。「藤田も人間だった」。その程度に止めておいた。もちろん、藤田自身もノ―コメントで一切の言い訳をしていない。そこで、いまだからほんの少しだけ私が勝手に言い訳をしておこう。あの当時、マルコ・ファス道場を拠点にロスで集中トレーニングに入っていた藤田であるが、帰国直前、本番の2週間前ほどに藤田の周辺でハプニングが起こった。中身は明かせないが、とても練習、試合に集中できる状況ではなかったし、心身ともにベストにはほど遠いコンディションであったのだ。
象をも倒すと言われたジョージ・フォアマン級の右フックがさく裂するかどうか
まあ、今さら1年前の話をほじくり返したところで仕方がないだろう。今回の藤田は、きっちりと仕上げてくるに違いない。本来であれば、5月中にはロスに入りたいところであったが、新型インフルエンザが蔓延した影響でしばらく自重した。藤田単独ならともかく、ロスに渡る際、藤田は常に家族同伴なので、そこを考慮したのである。
ただし、日本でも練習だけは怠ることなく、しっかりコンディションは維持していた。今年3月には藤田道場も引っ越している。これまでは、04年末、猪木事務所の閉鎖に伴い、猪木事務所が借りていた都内の道場を、藤田事務所が引き継ぐ形で借りてきた。ところが、3月に契約切れとなったために、藤田は千葉県の某所、海に近い場所に藤田道場を移した。本人いわく「藤田合宿所です」とのことで、じつに環境のいい場所だという。
ここで話は脱線するが、この藤田合宿所の前の大家さんが万全なセキュリティシステムを施していたために、本当にちょっと間違えると警報器が鳴ってしまい、本部に連絡がいってしまうらしい。引っ越した当初、そのシステムがよく分からなくて、何度か藤田は自分の道場に入れなくなって往生したという。
もちろん、「セコムしてますか?」でお馴染みのSECOMである。「まあ、これだけセコムしてますから、防御は完璧と言っていいでしょうね」。結局、8.2イワノフ戦に向けてのコメントはこれだけである。
さて、肝心の試合の方だが、ブラゴイ・アレクサンドル・イワノフ(ブルガリア)は、昨年11月、コンバットサンボ世界選手権で、エメリヤ―エンコ・ヒョ―ドルに8年ぶりの黒星をつけ優勝した実力者。「ねちねち」の攻防を好まない藤田にしてみれば、あまり密着したくはないタイプだろう。イワノフは若いしスタミナも十分である。ただし、打撃に関しては藤田のほうが上だと思う。いかに立ち技で優位に試合を進めるかがポイントになりそうだ。象をも倒すと言われたジョージ・フォアマン級の右フックがさく裂するかどうか、ここは気持ちよく野獣の復活劇を観てみたい。
先走りは禁物と分かってはいても、もしイワノフを突破すれば当然、石井慧の存在が視界に入ってくるだろう。私的感覚で言うと、吉田秀彦Vs石井より、藤田vs石井のほうに魅力を感じる。この2人からは、どこか似たような野生と天然の匂いが伝わってくるからだ。この大一番が実現すれば、私の取材キャリア23年の中で5本の指に入る“ドキドキマッチ”となるだろう。
過去の4戦とは、藤田の『PRIDE GP』デビュー戦(Vsナイマン)、安田の『PRIDE』デビュー戦(Vs佐竹雅昭)、石澤の『PRIDE』デビュー戦(Vsハイアン)、永田Vsミルコ(INOKI BOM―BA―YE)の4試合。あの当時の心臓の高鳴りを自分自身、また感じてみたい気もする。