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kamipro編集部・大川義之プロフィール

1973年5月20日、大阪府大阪市出身。中学・高校教師を経て、02年に日本語講師として渡韓。大学で日本語を教えながら、韓国総合格闘技の草創期からその成り行きを目撃。大会の観戦を重ねていくうちに、ライターや通訳、現地コーディネイターとして日本・韓国格闘技業界とかかわりを持つようになる。06年から『kamipro』誌上で韓国格闘技情報の月刊コラム「インサイド・コリア」の寄稿を開始。08年に帰国と同時にダブルクロスへ入社。09年6月よりフリーライターとして活動中。

4月26日更新

ヒョードルが韓国で会見! 訴訟問題で不快感!! トム・アテンシオがダナ・ホワイトにリアルファイトを要求!?

先週このコーナーでお伝えしたとおり、4月24日にはエメリヤーエンコ・ヒョードルをはじめ、M-1グローバルのワジム・フィンケルシュタイン代表、『アフリクション』のトム・アテンシオ副社長らが韓国を訪問。翌25日にはソウル市で会見を開き、韓国での訴訟問題などについてコメントした。今週は、そんなヒョードル周辺情報、さらには韓国でアンチファン増加中の秋山成勲の続報をお伝えします。

■ヒョードルが訴訟問題に不快感!!


現在訪韓中の“最強皇帝”エメリヤーエンコ・ヒョードルが4月25日(土)、ソウル市のホテルで会見を実施。この中でヒョードルは現在韓国養蜂(ようほう)農協などを相手に起こしている訴訟問題などについて公式見解を明らかにした。

ヒョードルが韓国養蜂農協を相手に訴えを起こしているこの訴訟は、07年1月にヒョードルが同社の製品の広告撮影をしたが、この撮影が事前にヒョードルと協議していなかったという。同年10月から進められていたこの訴訟は4月22日に最終公判が終了しており、5月13日に最終判決が発表される。ヒョードルは会見で「蜂蜜のCM撮影をすると言ったことはありません。このようなことが起きたことは非常に気分が悪いです。5月には最終的な判決が出るということなので、自分からはこれ以上何も話すことはありません」と、珍しく不快感を示している。
また、『アフリクション』で実現する可能性のあるヒョードルとジョシュ・バーネットの試合についてはワジム代表が「まだ決まったことはない。日本に行ってから具体的なことが決まるだろう」と回答。会見で次に闘いたい相手を聞かれたヒョードルは「いままでに闘ったことのない相手と闘いたいですね。できるならば世界で十本の指に入る選手と闘いたい」と語っている。

また同会見にヒョードル、M-1グローバルのワジム代表とともに出席した『アフリクション』のトム・アテンシオ副社長は、『アフリクション』にジェロム・レ・バンナが参戦するという噂について「バンナは我々の『アフリクション』がスポンサードする選手だ。チャンスがあれば出場させたいね」と語っている。アメリカで6月27日に開催される『ULTIMATE CHAOS』に参戦することを尋ねられると、アテンシオは「そのとおり。総合格闘技イベントで試合をするよ。チャンスがあれば、UFCのダナ・ホワイトとも闘ってみたいね」と言って記者を笑わせた。ちなみにダナ・ホワイトもトム・アテンシオもボクシングの経験がある。

■韓国での秋山とデニス・カーンの人気が逆転?


先週のこのコーナーでは、韓国でアンチ秋山ファンが増加していることを指摘したが、韓国の複数のメディアでも同様の変化を報告している。韓国の格闘技専門ニュースサイト『MFIGHT』は4月24日付の記事で「秋山成勲とデニス・カーンの人気が再び交錯している。秋山に対するアンチ世論が増大している一方で、秋山に人気を奪われたはずのデニス・カーンの人気が再浮上している」と報じている。
アンチ秋山ファンが増加した理由として、最近の秋山は格下の相手を選んで闘っていること、本業よりも芸能活動で頻繁にメディアに露出したことを挙げている。さらに「一部ファンは彼が在日韓国人という立場を利用していると批判する」として、ネット上の「秋山は日本と韓国の国旗を道着につけているが、それは単なるマーケティングのため。彼はお金を儲けるために韓国を利用しているだけ」という批判的な意見を紹介している。同記事では、このような変化について「短時間に熱しやすく冷めやすい状態を繰り返す韓国人特有の情緒が影響している」ことと、「スポーツ選手の芸能活動に対し、好ましく思わない韓国特有の雰囲気」が影響していると分析し、『UFC100』でのアラン・ベルチャー戦の内容次第では、さらにアンチファンが増加する可能性があることも指摘している。
一方、デニス・カーンの人気が再浮上した理由として、4.18(土=現地時間)『UFC97』で判定勝ちしたデニスが「トランクスに太極旗(韓国国旗)を付けて出てきたこと」を理由に挙げている。秋山もデニス・カーンも韓国国旗をコスチュームにつけている点では同じなのだが……。

また、25日には大規模ポータルサイト『メディア・ダウム』の格闘技コラムでは、UFCなどの格闘技解説者を務めるソン・ミンス氏が、同様にアンチ秋山ファンが増加傾向にあることを紹介しつつ、秋山擁護論を展開している。
まず、批判の的になっている「弱い相手を選んでいる」点については、「格闘技界においては秋山以外にも相手を選んでいる選手はいる」としながら、「秋山は飲酒運転、暴力沙汰や学歴詐称に嘘をついても平気な芸能人よりも罪深いのか? 彼らと違って秋山は選手を選んだという噂はあれど確証はない。しかもUFCに行くのであれば、この疑惑はもう意味をなさない」と反論する。
また、秋山側が展開していると言われている“愛国心マーケティング”については「秋山の愛国心が批判されるのならば、デニス・カーンの太極旗に対する愛情も非難されるべきものになる。『カナダ人が太極旗をつけて闘うのは、韓国で格闘技人気が高いことを意識したもので“日和見主義者”』と罵倒できるのだ。偏見を持って物事を見ればキリがない」とたうえで、「金儲けのために秋山が韓国を利用しているという意見もあるが、クリーム塗布事件のあと窮地に陥った秋山にチャンスを与えたのは韓国だ。彼に復活の舞台を与え、温かい声援を送ってくれた国に対して、少なくとも人間であるなら良心の呵責もなく、ずっと利用し続けるのは難しいはず」と秋山に信頼を寄せる意見を展開している。
またソン・ミンス氏は「もし、彼が現実に韓国を利用しようとしていたとしても、現在の格闘技界において、秋山は他ジャンルのパク・チソン(サッカー選手)、イ・スンヨプ(プロ野球選手)、パク・チャンホ(メジャーリーガー)、キム・ヨナ(フィギュアスケートの選手)に匹敵する存在なのだ。むしろ秋山はこちらが利用すべき、願ってもない切り札だ。一般大衆はスター選手にしか興味がなく、関心の対象はコロコロ変わる。ジャンルの人気を高める人気選手の粗さがしをしても、その代償はジャンルの没落でしかない」と格闘技の人気維持のためには秋山バッシングは意味をなさないとしている。

以上のように、韓国では秋山とデニス・カーンの人気にまたしても変化が起こっているようだ。また興味深いのは、韓国への愛国心を強調するという点では、共通するデニス・カーン、秋山成勲が時には人気の原因にもなり、時には批判の対象にもなるという点である。ソン・ミンス氏が指摘するように、デニス・カーンの韓国愛への称賛と、秋山の愛国心マーケティング批判を区別する論理的な整合性は見当たらない。
また、あえて言うならば、そもそも秋山成勲もデニス・カーンも韓国人ではない。同じ韓国への愛国心を表明しても、叩かれるときもあれば褒められもする不思議な騒動が起こるのは、「韓国の血を引いている」ことを理由に、韓国系外国人を“韓国の英雄”であると過剰に持ち上げてきた韓国のメディアの責任でもある。このようなことは格闘技界にかぎらず、NFLのスーパースターであるハインズ・ワード(駐韓アメリカ軍だったアフリカ系アメリカ人の父と韓国人の母の子)や、ゴルフ界のミシェル・ウィー(韓国系アメリカ人。両親が韓国人)を大きく取り上げたことを見ても、韓国のスポーツ報道ではよくある話である。

同じように、日本に帰化した秋山を「秋山成勲(旧名:チュ・ソンフン)」ではなく、現在でも「チュ・ソンフン(日本名:アキヤマ・ヨシヒロ)」と表記して“韓国の英雄”として見なしてきた捻じれが、韓国にも住んでいない秋山に対して「日本と韓国を行き来するコウモリ」とか「韓国語もロクにしゃべれないくせに」といったマッチポンプ式の批判を生んでいるのではないだろうか。韓国における秋山バッシングの増加には、秋山自身の責任によるものだけではなく、“韓国”を拡大解釈しようとしてきた中にも原因があるのかもしれない。

以上、今週の韓国格闘技情報でした。来週もお楽しみに。